My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「……海賊団を解散しようって話が出たんだよ。奪うことをやめて普通の暮らしをしようってね。あたしは反対した。今更なに言ってんだって話さ。あたしは最後までブルーには入れてもらえなかったが、奪ってきたもので暮らしているのはそりゃあ気分が良かったからねぇ」
アヴェイラが悪い顔で笑う。
「あたしは術士ってだけですべてを奪われた。だから奪い返す。――あの場所はそういう連中のたまり場のはずだった。なのにさ、変わっていくその空気がどうにも合わなくてね、居づらくなっちまった。そんであたしは同じように反対していた奴らと一緒にアジトを出たわけさ」
「……寂しくなかったの? 今まで一緒に暮らしてた皆と離れるの」
自ら好きな人から離れるのは、辛くなかったのだろうか。
「全く寂しくないって言ったらウソになるが、結果正解だったと思ってるよ。あたしは今のこの海賊の暮らしが性に合ってるからねぇ!」
そうしてアヴェイラは立ち上がり、くるりと私を振り向いた。
「と、こんなもんでいいかい? 早く次の歌を教えておくれよカノン! グリスノートの奴をぎゃふんと言わせてやるためにさ!」
その笑顔に後悔の色はみじんも感じられなかった。