My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「俺、昨日は混乱しまくってて、カノンさんは俺を助けてくれたのにあんな……助けてくれて本当にありがとうございました!」
私は首を横に振る。あの状況では混乱して当たり前だ。
こうして目を合わせて普通に話してくれることが今は嬉しくてたまらなかった。
「もう動いて大丈夫なの?」
笑顔で訊くとフィルくんはほっとした様子で続けた。
「はい! もうこの通り、大丈夫です!」
そしてフィルくんはその場で大きく腕を振りながら屈伸運動してみせてくれた。
「ってぇことで、フィルにはこの船にいる間うちの連中と一緒に働いてもらうことになったからね」
「え、そうなの?」
フィルくんに視線を戻すと、彼は苦笑した。
「そういうことに、なりました」
「もう海に落ちたりしないように、ここにいる間ビシバシ鍛えてやるからな!」
アヴェイラに肩を叩かれフィルくんはハハ、と力なく笑った。
……なんだかフィルくんはもうこの海賊船に馴染んでしまったみたいだ。