My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「最初はちょっと怖そうだなって思ったんですけど、話してみたら全然そんなことなくって」
「へぇえ? あたしたちを吹っ飛ばしてくれたあの術士、ラグっていうのかい」
フィルくんの話を遮ったアヴェイラの声が冷え冷えとしていて、顔が上げられない。
「あのラグ・エヴァンスと同じ名前じゃないか。こんな偶然あるのかねぇ、カノン?」
強い視線を感じて、誤魔化せないと思った。
「ごめんなさい!」
私は椅子から立ち上がって頭を下げた。
「昨日アヴェイラの話を聞いて言い出せなくなってしまって」
「……」
少しの沈黙のあと、はぁ、とひとつ大きな溜息が聞こえた。
「なんだってあの男がグリスノートの船に乗ってるんだい。まさか、あたしたちを吹っ飛ばすためってわけじゃないんだろう」
それも理由のひとつではあったが、言えるわけがなく。