My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「目的が一緒で……」
「目的ねぇ」
「あの、なんの話ですか? ラグ・エヴァンスってラグさんのフルネームですか?」
フィルくんが興味津々というふうに目を輝かせていて、アヴェイラが不快を露わに眉を寄せた。
「フィル、あんた知らないのかい? ラグ・エヴァンスはね」
「アヴェイラ!」
思わず大きな声を上げてしまっていた。
アヴェイラが目を丸くしている。
「カノン、さん?」
フィルくんもきょとんとした顔だ。
彼には……ラグを慕っているフィルくんには知って欲しくなかった。知らないままでいて欲しかった。――だから。
「お願い。アヴェイラ」
私は必死な思いで首を横に振る。
すると彼女はもう一度小さく息を吐いてフィルくんに視線を戻した。
「フィル、あんたもう行きな。持ち場はさっき話した通りだよ」
「え、でも」
「行きな」
「……わかりました」
アヴェイラに強く言われ、フィルくんは何度もこちらを振り返りながらも船長室を出て行った。