My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「言わないでくれて、ありがとう」
「……座って、早く食べちまいな」
「え? あ、うん」
私は椅子に座り直して、まだ手を付けていなかったパンを手に取った。
気まずい空気が流れる中、私はその硬いパンを水と一緒に胃に流し込んでいく。
ベッドに腰を下ろしたアヴェイラの表情はここからでは見えない。
……ラグのことをどうしても許せないと、昨日彼女は話していた。
術士である彼女が過去にどんな酷い仕打ちを受けてきたのか私は知らない。でも……。
「――目的って」
「え?」
丁度トレーの上のものを全て食べ終わり、ご馳走様と言おうとしたときだった。
アヴェイラがこちらを見ずに低い声で言った。
「ラグ・エヴァンスと銀のセイレーンが一緒になって、今度はこの世界を消そうってのかい?」