My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「そんなことしないよ!!」
椅子を倒す勢いで立ち上がり大声で否定していた。あんまりな、酷い誤解だ。
「ラグも、私も、そんなこと絶対にしないし、考えたこともないよ!」
叫ぶように続けると、こちらを振り向いたアヴェイラはなんだか悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「だよねぇ。あんたがそんなことを考えるようには見えないし、グリスノートの奴がそんな話に乗るとも思えない」
「アヴェイラ……」
力の入っていた肩をゆっくりと下ろしていく。
「昨日、あんた苦しんでるって言ってたね」
「え?」
「ラグ・エヴァンスの話をしたときに、そいつも苦しんでるかもって」
私はこくりと頷く。
「そんなこと、考えたこともなかったねぇ」
そう呟くように言って、彼女は天井を仰いだ。
「その名の通り、人の命をなんとも思わない悪魔のような奴だと思っていたよ」
「違うの!」