ヤマジ君の…ヒミツ★
きっとあの箱にはチョコレートが入っているんだ。

バレンタインに渡すことのできなかったチョコレートが。


井川加奈子はそれをずっと鞄の中に入れたままだったのだろう。


大事に大事に……。

渡す勇気のないその箱を。



「それ、オレに?」


井川加奈子は相変わらず耳を真っ赤に染めたままコクンと頷いた。



「もらっていい?」


ヤマジ君は井川加奈子の手からそっとチョコを受け取った。


誰からもチョコを受け取ろうとしなかったあのヤマジ君が。


彼が欲しかったのはきっと世界にたった一つしかないチョコ。


井川加奈子からのチョコレートだったのだろう。




< 108 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop