ヤマジ君の…ヒミツ★
あたしは慌てて顔を上げた。


「ヤマジはいい男やん。 惚れとったんやろ? あいつに」


「な……」


あたしは絶句した。

なんで工藤聡史はこんなに勘が鋭いんだ。


周りのことが把握できるにしてもほどがあるよ。

あたしですら自分の気持ちにやっと今日気づいたぐらいなのに……。


ていうか、あたしが単純でわかりやすすぎるのかな……。



「……ない」


「へ?」


「つまんない……つまんな―――い!」


あたしはその場でジタバタと床を踏み鳴らした。


「ヤマジ君って案外普通なんやもん。なんていうの? もっと俗世間からかけ離れたようなさ……。いかにも王子様って感じのキャラかと思ったのに。あんな普通のヤマジ君になんか興味ないっ」


フンッと鼻を鳴らした。


強がりじゃないもん。

ほんとにそう思ってるもん。


普通の男の子のヤマジ君に魅力なんてないんだから!


そう思ってるのに……。

なんで今あたしは胸が苦しいの?


頬を伝っているこれは何なの?


「ううっ……」


あたしは俯いてオイオイと泣き出した。




「んー……困ったな」


頭上から工藤聡史の声がする。


「あ、そや」


工藤聡史はごそごそと制服のポケットを探る。

そして、あたしの目の前で手のひらをパッと開いた。


「これ、やるわ」


< 116 / 128 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop