ヤマジ君の…ヒミツ★
「春になったら、なんかええことあるかもよ?」


何を根拠にそんなこと言うんだ。

失恋したばっかりだと言うのに……。



「何で?」


「だって、春は、はる子ちゃんの季節やろ? 春生まれやから“はる子”なんちゃうの?」


「は? あたし秋生まれなんやけど」


「え? マジで? はる子ちゃんの親のネーミングセンスってすげーな。それって、イチローが次男やのに“一郎”やって知った時と同じぐらいの衝撃やわ」


「何言ってんの? ほっといてよ、人の名前ぐらい」


工藤聡史とバカみたいな会話をしながら、通り過ぎる桜の木をチラチラと見た。


あの木に蕾がつき始める頃には……あたしは失恋から立ち直ってるかな。


今はまだちょっと胸が痛いけど……


きっと大丈夫。


なぜかそう思えた。





あたし達が校門から出ようとした時、工藤聡史の足が突然止まった。


「げっ……やばっ」

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