ヤマジ君の…ヒミツ★
昨日、告白してきた名前も知らない女の子も、散々自分の気持ちを押し付けたあげく、僕が断ると

「ヤマジ君……って、意外に冷たいんやね」

と捨てゼリフを残して去って行った。



意外も何も……僕は僕だ。

ただ彼女が僕という人間をたいして知りもしないのに、勝手に自分の理想に当てはめていただけなのだ。


もう、僕のことは放っておいてほしい……そう願うことがよくある。

バンドなんてやってるクセに、矛盾してるかもしれないけど、実は他人から注目されることが嫌いだ。


幼稚園の頃、学芸会でやった“シンデレラ”。

あれは今でもトラウマになっている。


僕の役はお城の王子様だった。

メインキャラの役をもらえたことで、母親は喜んでいたけど……。


僕はスポットライトを浴びて、白タイツ姿を人前に晒すことが嫌で嫌でたまらなかった。


逆に城の庭に植えられた“木”の役をしていた近所のコウちゃんが羨ましくてしょうがなかった。


僕は“木”になりたい。

誰にも注目されないけど、ひそかに劇を支えるような……そんな存在でいいんだ。

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