ヤマジ君の…ヒミツ★

ヤマジ君と桜の木

「あたしも帰ろう……」


あたしは眼鏡をかけて、帰り支度を始めた。



廊下に出てとぼとぼと歩く。


ふと窓から外を見ると、大きな桜の木が見えた。

何も身に纏っていないその姿は、なんだか寂しそう。



この木にピンクの花が咲き始めた頃、あたし達はこの学校に入学した。


そしてあたしは、この木の下で初めてヤマジ君を見たんだ。



中学の頃、あたしは男子が嫌いだった。


ガサツで汗臭くて、顔なんて油が浮いてテカテカしちゃってさ。

女の子をキュンとさせるような気の効いた言葉も言えないし、ガキっぽいし。


あたしが読む少女漫画や小説に出てくる美少年達とはまるでかけはなれていた。


だけど、これが現実。


頭ではわかっている。


わかっているけど、虚しい現実を直視できるほどあたしはまだ大人になれていなかった。



きっとどこかに王子様はいるはずだって……そんな夢から醒めたくなかったんだ。



そんな時、ヤマジ君に出会ったの。