片思いー終わる日はじめる日ー
 クマが引きずってきたトレーニングマットを幅跳びの踏切板横に置いて、ポールにチューブクロスバーをセット。
 さあやるぞ、と振り返ったら女子は全員あたしたちにお尻を向けていた。
 なに?

「キャ――!」

 全員がほぼ同じ声を出すと、あたしひとりの声よりよほど近所迷惑に騒音だ。
 あたしには立ちふさがる女子の群れでなにも見えないのに、耳をふさいだクマがニカッと笑ってあたしを見た。
 だからなによ。
「すげえぞ、相田(あいだ)赤根(あかね)が背面飛んどる」
「…え」
 見えない。
 見えないんだよ、あたしにはお尻しか。
 ととっと走り出したらだれかに腕をつかまれた。
「どうしたの、おたくのバクちゃん! ……マジじゃん、マジ!」
「も、すごいのよ。見た? 有実(ゆみ)
 見学の井森と大海ちゃんも見ていたらしい。
 あたしは腕にからみつく両脇のふたりを引きずって前に出た。
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