片思いー終わる日はじめる日ー

 あたしから見えるのは、中井のようなクリンクリンじゃないけれど、やわらかそうにウェーブしたくせっ毛のアタマだけ。
 われ関せず。
 無視! ってか?
 ふん。
 さすが遅刻男。協調性のないヤツ。
 あたしの遅刻ギリギリは母さんのせいだからね、きみとはちがうんです。
 ぶん! と頭を振って黒板に向き直ると、中井があきれた顔で筆のおしりを黒板にコツコツ、コツコツ。
 さすがに5回も叩くころには鎮まったみんなをゆっくり見回して。
 肩をすくめるしぐさまでかわいいなんて反則だ。

「おちついた? わたしに言わせればこの程度、目くそ鼻くそだよ、諸君」
 ぎゃぁぁぁ。
 やめて中井センセ。
 花でしょ? ライラックでしょ?
 イメージは大切だよぉ。
 今度は笑い声もまじっているけど、また騒がしくなった教室で
「はい、はい、はい、しぃずぅかぁ、に!」
 …って言いだしっぺが笑ってたらダメじゃん、中井ったら。

 ほかのみんなはどうか知らないけど、あたしは自分が思っていたほど頭がいいわけじゃないって、たった今、思い知らされたところなんだからさぁ。
 ジャスト真ん中くらいの人間に部活って、無理…かな。
 どうしよう、不安しかない。
 あたしのとりえなんて運動神経だけなのに。
 大好きなバレーがもう……できない?
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