片思いー終わる日はじめる日ー
「ガキばっかりだな、この学校は……」
 泣きそうなのに思わずふり返っちゃったのは、さっきまで異世界人だった出席番号2番が、今度ははっきりつぶやいたから。
「……っ……」
 いきなり目があってしまったのは計画外だったとはいえ。
 見たい見たいと思っていた顔が目の前にある。

 さっきはてっぺんしか見えなかったくせっ毛が、今、はらっと落ちておでこにかかった。
 その下のまっすぐでそろった眉毛と、くっきり二重の猫みたいな目。
 つんとした鼻で左右にシンメトリーなタマゴ型の輪郭。
 石川ほどじゃないけど、ほどよく日に焼けていて。文庫本なんか読んでいるよりは外でワーワーやっているほうが似合いそうなのに。
 石川とちがって、見るからにオトナっぽいかんじなのはなんでだろう。
 眉毛の間に、シワなんか寄せちゃってるから?
 でも……。

 だんだん突きだしてくる唇が、そこだけ、やんちゃボーズみたいだ。
 ま…あ、母さんの目も、まんざらじゃないかも? って、納得できるほどには悔しいけどカッコイイ。
「…………」
 うん?
 すっかり観察には満足したのに、そのまま彼を見つめちゃったのは、彼がなんだか知っているひとみたいに思えてきたからだ。
 だれ?
 なんだか、最近どこかで……。
 やだ。思い出せない。気持ち悪い。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
< 13 / 173 >

この作品をシェア

pagetop