片思いー終わる日はじめる日ー
 気まずいまま座っていると、病院の暑さは耐えられないほどで。
 廊下でもう上着は脱いでいたのに顔が火照る。
 帰ろう!
 決めて椅子からお尻を浮かせたとき(ばく)が言った。
「おまえ、暑いんだろ。そのベストも脱いじゃえよ。外に出ると反動で寒いぞ」
 ――――ぇ?
「でももう帰るか…」「もうちょっと、いろ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
 身体が熱いのはなんのせい?
 顔が燃えてるみたいなのは、なんのせい?
「もうちょっといろよ。…な」って麦は病室の天井に。
「うん」ってあたしはスカートに。
 だけど言葉は乱反射して、あたしの胸に、こんなに熱い。
「…病人に身体の心配させんなっ」
 だんだんとがる唇が好き。
 怒られて、うれしい。
 ばかなあたし。
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