片思いー終わる日はじめる日ー
「だからさ、そうやってひとのこと見るの――やめろ」
「…………」
「…………」
「……ぁの……」
 (ばく)が小さくうなずく。
「おれ、別に――。別に、好きだとかきらいだとか、そんなんじゃない。おれ…、おれとあのひとは……」
「知ってたの?」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」

 長い、長い間、どちらもなにも言わなかった。
 麦はベッドから、まじろぎもせずに、あたしを見てた。
 あたしは口のなかがカラカラになって。
 いつの間にか、つかんでしまっていたスカートはクシャクシャだ。

 ぽたっ ぽたっ ぽたっ 

 点滴だけが静かに落ちる。
 麦が針の刺さったその左腕で、椅子に座ったあたしの右手をつかんだ。
 その大きなバッテン絆創膏がこわくて、振り払うことができないままに、指先まで震えだす。
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