片思いー終わる日はじめる日ー
「――だってさ」
 あごをひょいとうしろの石川に向けると、赤根(あかね)が眉をしかめて返す。
「お好きにどうぞ」
「自信あるんだ」
「…………」
「…………」
「おまえらがばかなんじゃね?」
 う、わぁぁぁぁぁぁぁ。
 騒がしい教室で、それは小さい声だったけど、あたしにはちゃんと聞こえたからね。

「こぉらぁ。わたしは伝えれば帰れるんだから――。お黙り」
 騒ぎを鎮めようと、中井が手をパンパンと叩きながら教壇を降りてくる。
 中井が脇に立つと、赤根 (ばく)は、サッとあたしの視線をはずしてうつむいた。
 石川に続き、またしても、こ…んの、優等生ぶりっこ!
 なんなんだ、男子って。
 また、ぱらっとおでこにたれるその前髪、引っぱってやろうか。
 怒りムラムラ。
 中井が、赤根の机にドンと肘をのせたあたしの頭をぽんと小突いた。
 見上げるとすぐに肩をすくめて。
「静かにしなさーい」って、気の抜けた声で言いながら後ろに行っちゃったけど。
 中井が行きすぎると、おでこにすべってきた前髪を頭にもどしながら、赤根(あかね)があたしに肩をすくめてみせた。
「……おれはランク下げたからな」
 ががーん!
 なんてやつ、なんてやつ。
 そのダメ押しにショックを受けて、そのときなにかがチラッと頭をかすめたけれど、そんなものは、ふっとんじゃった。

 い、や、な、やつぅ。

 こんなやつとは一生! 仲良くなんかしてやるもんか。
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