片思いー終わる日はじめる日ー
* * *
圧倒的に女子の少ない進学校には女子更衣室があった。
中学のときは教室で着替えていたから、男子を廊下に追い出したりして、それもケッコウ楽しかったけど。
あからさまに女性として扱われると、どうしたらいいのか困るのは、あたしが子どもだからかな。
「ねぇ、今日の中井先生、見た?」
「見た見た。あれは寝坊したね。髪の毛がわたあめだった」
女子だけになると必ず中井の話が出るのは、女性は美術の中井とオバサマ養護教諭のふたりしかいないからだ。
「そういえば、入学式の日、なんか騒いでなかった? D組」
女子の体育は4クラス合同で、組に関係なく友だちはできそう。
ただ、話題がなぁ……。
あわない気がするのは、人数が少ないうえに運動部だった子がいなさそうな雰囲気をビシバシ感じるから。
「ああ」だれかが思い出し笑いでクスクス。
「中井ちゃんの目くそ鼻くそ事件?」
とたんに笑い声が広がって。
雰囲気だけは中学の部室みたいなんだけどなぁ。
あたしはね、思うのよ。
「中井センセが言ったのはさ――…」
いっせいに、なになに? という顔で見られて、ちょっと緊張。
「えとね……。中井センセが言いたかったのはさ、つまり、同じレベルの人間が集まって、仲間になっても、そこにも競争があるってことでしょ?」
「…………」「…………」「…………」
はい。ドン引きされました、と。
「えと、ごめんね。あたしほら、部活やってたからさ。仲間って競い合うもんだっていう、なんかこう……」
「いやーだ。相田さんって真面目?」
「ひゅー、ひゅー」
これだもの。
あたしはため息をついて、三中バレー部のユニフォームに手を通した。
「やだ、相田さん。それってもしかして……」
「えっ、知ってるの?」
いやぁ、うちの中学もけっこう有名なんだぁと、にやにやしたのも一瞬。
「信じられない。相田さんたら、せっかく体操服自由なのに。ねえねえ、みんな、見てよ、これ」