片思いー終わる日はじめる日ー
「……カ…ゴ。カゴだ相田。ぶはははははは」
「……女子ふたりで?」
キッと指さしてやる倉庫は校庭のすみ。
「あんな遠くから?」
「おまえなら、できーる!」
どこからくるんだ、その根拠のない断定は。
にらんでやるのにクマの笑いは止まらない。
行け行けと手まで振られたらもう行くしかない。
しぶしぶ走り出すと、ついてきた子も笑っていた。
「あたし井森。あんた、かわいい。気にいったわ。よろしくね」
「え…、あ、うん」
人なつっこいのはいいけど。
井森さんてばピンクオバケだ。
やる気なし組の代表ね。
はぁ…。
それでも走ってはくれる井森さんと倉庫まで行くと、こいつだけは顔と名前と声がすっかり一致しちゃったやつ。
「アカネバク」
赤根が全身真っ白なウエアで、倉庫のなかにボーッと浮かんでいた。
幽霊か!
「――あ」
あたしの声にふり向いた赤根は、やっぱりバレーボールの入ったカゴを、知らない男子とふたりで運び出すところらしい。
ところがどうにも息が合わなくて、10センチほどの敷居が越えられない?
「なに、井森も出席番号か? おれたち不幸のずんどこだな。こりゃマジ重いぜ、手伝ってくれよぉ」
そりゃ逆だろう、きみ。
助っ人がほしいのはこっちだわ。
…というかね。
「あー、イライラする。あなたたち、せーの! とか言えないの?」
引っかかるのはふたりでタイミングよく持ち上げないからでしょうよ。
「ちょっと、赤根くん、いい? せーのって言ったら持ち上げてみて。――はい、せーの!」
「あ!」「おっ?」
赤根はうつむいて、知らない男子はホッとしたようにあたしを見た。
「なんだ、引っかかってたのかよ。…でも、やっぱ重いぜ、こりゃ。健闘を祈る」
「クマのやつぅ……」
教師にこき使われるのは生徒の宿命とはいえ…げっそりだ。
中学のときの経験がなかったら、重さも知らず途方に暮れたかもしれないけどね。