片思いー終わる日はじめる日ー
「はい、井森さん。あたしたちも、さっさとしよう」
「いやだ、相田(あいだ)。安藤が重いって言ってるじゃーん」
「…………」
 だからなに?
 やらなきゃいけないことは、さっさとやろうよ。
「――どいてくれる?」
 入り口でまだもたもたしている男子組の横を通り過ぎるとき、ふと目に入ったもの。
 白い短パンから延びた足。
 うっそぉぉぉぉ。
 赤根(あかね)ってば男子のくせに、なんだってそんなにスベスベなのよ。
 ただでさえ長さが気にいらないのに、どうなってるの?
 あたしは、ちょっぴり毛深いかなぁ…って気にしてるのよ。
 なんだか、とっても――、怒り。

「ねぇ相田ぁ。だれか手伝ってくれないかしらねぇ……」
「ゃ…」
 井森さんたら、そういうぶりっ子やめて。
「先生はふたりで行ってこいって言ったんだから。持てると思ってるんだよ。さ、早くしよう」
 赤根があたしをチラッと見た。
 な、によ。
「わかった。待ってな。女子のも持っていってやるよ」
「えええええ」
 声を出したのは安藤くんで、心のなかで叫んだのはあたし。
< 20 / 173 >

この作品をシェア

pagetop