片思いー終わる日はじめる日ー
「帰ってきた!」
 くぅぅぅぅぅ。
 女の子に手を出すわけにもいかず、握った拳をぶらんぶらん。
相田(あいだ)ね、男とハサミは使いようって。覚えましょうね」
 耳元でささやかれて怒りがどかんどかん噴射。
「知るかっ」
「こっわーい」
 言い争っているうちにふたりが倉庫の中にもどってきた。
「えへ。ごめんねぇ、ふたりともぉ」
 …って。このムスメ。
 赤根(あかね)と安藤くんがもどってくるなり、ぶりっ子全開。
「助かったねぇ、相田」
 そうやっていちいちあたしを仲間にするのやめろ、まったく。
「別に……。先生にも手伝ってやれって言われたし」
 安藤くんはイヤそうに言ってるわりに、井森のほうをちらちら意識してる。
 ぶりっ子は正義。
 正義「正」は正しいの「正」。
 くそっ。
 おかげであたしは、赤根に借りができてしまった。
「どーも」
 アリガトウは口の中で消えた。
 あたしって、かわいくないね。
「……いゃ……」
 えっ?
 ぼそぼそ聞こえるほうを見ると、真っ赤な赤根の顔があった。
 おまけに。
 くやしいことにそれは、あたしより頭ひとつ分、高かった。
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