片思いー終わる日はじめる日ー


「おーし、相田(あいだ)
 クマ先生があたしをご指名。
 うー。
 にっくき出席番号1。
 もう先生に出席簿の名前と顔のマッチングをされちゃった。
「おまえ、バレー部出身だな。……ちょっと来い。みんなも見てろよ。今、相田が高校バレーてやつを、みんなに見せるからな」
 な…んだ、なんだ。
「おぅ、おまえ、ポジションどこだ?」
「ライトバックしてました」
 あー、なつかしいボールの匂い。
 (てのひら)ですりすり。
「ほぅ。切りこみ隊長か」
「…サーブは好きです」
「まんまだな。気の強そうな顔しとるわ」
 それ、ほめてんの?
「なら打てるな? オレが上げるから打ってみな」
 なんだかなぁ。クマのやつ、にたにたしちゃって。
 まぁ、どんときなさい。
 とにかく上げてさえくれれば、この有実(ゆみ)さんがパシッとね。

 クマが投げてきたボールをトス。
「ほい!」
 おお。
 上がったのは思いがけずきれいな平行トス。
 よっそーれっ!
 自慢のジャンプ力、見せちゃうぞぉぉ。

「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 まずい!
 思ったときにはもう思いきり腕を振っていて。
 かろうじて倒した頭の横スレスレを、ネットから跳ね返ったボールが飛んで行くところだった。

 重力のままに地面にもどった足がふらついて。
 ネットにもたれこんだあたしの足元で、地面をポンポンと転がっていくボールの音がする。
「わはははは。いやぁ、素直な反応、ありがとう」
「…な、んで?」
 なんで?
 そりゃあ、受験勉強でちょっとは身体がナマってたかもしれないけど。
 思いっきりジャンプしたよ、あたし。
 なんだって、目の前がネットだなんてことがおきるのよ。
 あのまま打っていたら、ネットにひっかかったボールが顔面、直撃!
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