片思いー終わる日はじめる日ー

「そりゃ、ママの子だから、あんまり大きくならないかもしれないけど。川合選手も牛乳を飲んで大きくなったっていうしね」
「…………」
　バレーボールの川合選手は母さんのあこがれのひとだ。
　あたしが生まれた頃には引退されていたけど、母さんはもう再生できないビデオテープも未だに大切に持っている。
　あたしにはまだ、そんなにまで好きになれるひとはいないから、父さんと結婚するほどの恋愛もしたってことは母さんをリスペクト。
　もちろん、そこだけ、ね。
　なにしろ、あのひとも、このひとも好き。
　赤根(あかね)のことだって『カッコイイ』って言ったひとですから。
　いいかげんなのよ。
「牛乳を飲んで背が伸びたひとなんて――。もともとの遺伝だってば」
「なんで決めつけるの？」
「…………」
　そんなの、もうあきらめたからに決まってるでしょ。

　父さんが170センチ。母さんが155センチ。
　あたしが高1で154.4センチなのはもう仕方ないんだよ。
　いまさらなにを考えてんのよ。

「有実(ゆみ)。あきらめたら、それで終わりよ」
「…………」
　そのセリフ、父さん秘蔵の漫画本で読みました。
　ヲタクな両親を持つとむだな知識ばかり増えるわ。