片思いー終わる日はじめる日ー
「……相田。――なにしてるの、きみ」
全然気づいていなかったっていえばウソで。
もしかして……とは思ったけど。
でも。
知らなかった。
「それ……、赤根くんの?」
もうやだ、もうやだ、もう絶対!
美術部に入ろうなんて、地球が四角くなっても思わない。
「ああ、コレ? きたないだろ、もうずいぶん使ってるから」
「…………」
あたしをときめかせたすっごい絵具箱の持ち主は赤根だった。
最近なんだかちょっと、印象が柔らかくなったような気もするけれど、やっぱり最初の印象はそんなに簡単に消えるもんじゃない。
「相田さんも、絵、描くの?」
とんでもない!
あたしはひたすらぶんぶんと首を横に振っていた。
秀才で芸術家。
これ、絶対、近づいたらダメなひとでしょ。
* * *
シュッ、シュッ、シュッ。
鉛筆を動かす音以外は、ときどき誰かが乱暴に消しゴムをかける音がするだけ。
午後の通し授業は、おなかも満ち足りて、2時間があっという間に過ぎてしまう。
美術の授業の今日の課題は人物デッサン。
モデルは全員。
そんなことを言われてもねぇ。