片思いー終わる日はじめる日ー
 あたしが恥ずかしさと悔しさミックスでこわばった顔を、必死に動かして、お姉さんたちにお愛想笑いをしてるのに。
「…………っ」
 あいつ、笑った。
 笑ったでしょ、いま。
 ばかやろう。
 ちょっと自分が背が高いからって。
 こっち見てみろ。
 顔、見せてみろ。
 一生はがれない呪符を貼ってやる。

ぜーぜ- ぜー

 ちょっと呼吸が整ってきた。
 背中しか見えないけど、あいつはまだ笑ってる。
 だってその背中が震えてる。
 見逃さないわよ。

「やだ、なにしてるの、赤根(あかね)くん。きみ、総代だからいそいで体育館に行ってって言ったでしょ。担任の河島先生、たぶんもうイライラマックスで頭から血ぃ吹いちゃってるわよ」
 ソーダイ!?
 ほ、ほぉー。
 総代って成績1番の子でしょ?
 ますます顔が見たい。
 どうせ母さんの目なんてアテにならないんだ。
 なにしろ、父さんを選んだひとだからね。
「相田さん、あなたも早く行って。ついでに副担任の中井先生に、赤根くんも到着しましたってお伝えして」
「ナカイ先生?」
「うちに女の先生はふたりしかいないから、行けばわかるわ。あーよかった。これで全員そろったわ。さ、ふたりとも早く! …ほら、A組がもう移動を始めちゃってるじゃない、ハリアップ!」
 どっひゃー。
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