片思いー終わる日はじめる日ー
「赤根ぇ。ちょっと手を伸ばせばいいだけでしょ」
「…………」
だんまり作戦ですか。
はぁ…。
なんであたしがあなたのお世話をしなきゃならないのよ!
…と思うけど。
考えてみたら、最初に話しかけちゃったのはあたしだからな。
なんだろう。
ひよこのお母さんってやつ?
「……大海ちゃん、ごめん。これ赤根が見てくれって」
あたしと大海ちゃんは巨大机の対角線。一番遠い仲なのよ。
1番、2番で1カ月半すごして、あたしは召使。
3番の石川はおとなりさん。
人見知りくんも少しは馴染んできたようだけど、そうなるとこっちにもわかってきたことがある。
すっごいわがままなの、赤根 麦って子は。
まぁ、マイペースなのは、入学式の日から知りたくもないのに知っていたとはいえ。
「あたしはきみのお母さんじゃないんだからね」
「そうよ、召使よ。ねぇ」
「石川ぁ。むだ口きいてないで、さっさと標本を出しな。…って、なにこれ」
「――なんだよ」
「石川、なにこれ。もっとドバッとつけなさいよ。こんなちょっぽし。これじゃ試薬も反応しないわよ。…ったく声ばっかりでかくて。……臆病者」
「いーだろ、それで! オレはおまえみたいな野蛮人とちがうの」
「ほ一。小心者がぁ。……わかった! あんたの血液型きっとコ型だわ」
「ひっでぇ、相田。それっておまえに言われたかねぇよ! こ…のチビ」
「チビで悪かったねぇ、えぇチビですよ。でも女の子だもーん、だ」
「こ…れだもんなぁ。なんとか言ってやってくれよ、赤根」
間にはさまれた麦はすましてレポートを書いている。
「……伊勢、チェック、A型。……相田、チェック、B型」
えっ?