片思いー終わる日はじめる日ー
 体育初日のあのことを、未だに引きずっているなんて、クラスの女子たちに知られたくないから、意地でも授業はいつもどおり、石川とバカやったりして笑っていたけど。
 放課後は、母さんが風邪をひいたことにして、サッサと帰っていた。
 中井とはずっと口をきいてない。

 授業中に、中井が絵の批評とは関係ないことを言いだすと、近くのだれかに返事をおしつけて黙っていた。
 中井はあたしが無視しているのに気づいて、おとなしくひきさがる。
 えらそぶって教師しないところが、中井らしいんだ。
 らしくないのはあたし。
 だれとしゃべっても楽しくない。
 楽しくないからしゃべりたくない。負の連鎖。
 だからもう振り向けなかった。後ろの席は。

 ふすまみたいなキャンバスに立ち向かう麦。
 好きなことを好きだと、はっきりみんなに示せる芸術家さん。
 だから麦とは話せない。
 麦の目が見られない。
 あたしは、あたしが……あたしひとりが、すっごくつまらない子だって知っているから。
 みじめでたまらないの。

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