片思いー終わる日はじめる日ー
うーん。
おまけに、ついてない。
うちの中学の子、だれもいないよ、この組。
居眠りしてるうちに式が終わって退場。
たぶん河島先生だと思われる小枝みたいにやせたオジサンに、キーキー声で『あなたってひとは! いそぎなさい相田』って名指しで怒られたのは、あたしが『あいだ』で出席番号が1だからだ。
そりゃ最前列で居眠りしたあたしも悪いけど。
居眠りさせるようなお話をする校長先生も悪くない?
おかげであたしはまた、あいつの顔を見そこなったのよ。
「おい相田」
いや待て、なんで呼びつけ?
振り返るとひとつ空いた席のうしろで知らない男子が親指を下に向けて空いた机を指していた。
「…………」
絶対に床屋さんカットの短髪に、げじげじ一文字眉。
今どき絵本にしか生息していないガキ大将みたいな色黒がまた憎らしい。
あたしなんか半年もお受験戦士で、去年は夏休みも塾・塾・塾。
肌なんてもうお姫様みたいに青白いっていうのに。
「オレが石川 啓介、出席番号3番な。で、おまえが1番の相田だろ? さっそく怒られてたからすぐおぼえたぜ」
「…………」
むっかぁあああ。
あたしは代表で怒られてやっただけよ。
どうせみんな居眠りしたくせに。…知らないけど。
「で。ここな」空いた席をまた指差し確認。
「このムギってバクって読むんだな。さっきの総代だろ、ここ」
「…………」
出席番号2番、赤根 麦。