片思いー終わる日はじめる日ー
 4日ぶりに登校したあたしが、生徒玄関からまっすぐクマのいる体育教官室に走っていって。
 バレー部に入りたいって言ったらクマが泣いた。
 びっくりして立ちすくんだあたしの手をにぎって
「3カ月の遅れはきびしいぞ相田(あいだ)。基礎体力から鍛えなおさにゃならん。ついていけるのか? 覚悟ができてるなら、その入部届、受け取らせてくれ」
 先生、いろいろ日本語がおかしいよって。
 あたしまでつられて泣きそうになりながらツッコむと、クマはくしゃって顔をゆがめて笑って――。

「本当に立ち直りの遅いやつだなぁ。オレは責任を感じてずっと胃が痛くて、死にそうだったんだぞ」
 えっ?
「中井先生も、いつくるか、もうきたかって、そりゃ心配しとったんだ。ひと言あいさつせんといかんぞ。相田」
「中井…センセ、が……」
「ま、高校生にもなったら自主性を尊重せんとな。オレたちが心配するような問題じゃないから放っておきなさいって言っとったんだが……」
 中井が……。
「だいたいおまえもいかん。今のキャプテンなんか、鼻血吹いたその日に入部手続きに来たってのに」
 クマがあたしの頭をボールみたいにつかんで揺する。
「ようこそバレー部へ。オレが監督のクマだ。ただし、人前でオレを呼ぶときは、ちゃんとかわいく近藤センセって呼ぶんだぞ」

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