片思いー終わる日はじめる日ー
「おぅ。午前の組のやつらが言ってた。今日から野外スケッチだってさ。時間内に帰ってくれば場所は自由なんだと。中井が気ィ使ってくれたんじゃね? もう期末試験だしな」
「うわぁ、そうなんだ。やだ、どこ行こう」
「おいおい、わかってんのかよ」
「わかってるわよ。あんたじゃあるまいし」
「ちぇ、口のへらねえ女」

 わかってるよ、石川。
 あんたがあんなに燃えてた球技大会。
 あたしがズル休みしたことに気づいてるのに、なにも言わないでいてくれる。
 いつか、ちゃんと謝れる日がくるかな?
「な…んだよ、黙って。気味わりぃな」
「ごめんよぉ」
 まだ梅雨明け宣言は出ていないけど、良いお天気なんだもん。
 ニコニコできるあたしをほめてよね。
「笑うな」
「笑うぅ」
「ふふ」あたしと石川の不毛なやりとりに大海ちゃんも笑う。
「いいなぁ、美術さん。書道専攻も外で書かせてくれないかなぁ」
「提案してみれば?」「提案してみれば?」
 石川とあたしの返事がハモって、うしろの席でお弁当を食べていた伊勢くんと内山くんまで爆笑。
 やさしいなぁ、みんな。
 どうして、そんなみんなの気持ち、きみには伝わらないの、麦。


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