片思いー終わる日はじめる日ー
「あれ? 石川、まだいたの」
 スキップしながらたどりついた生徒玄関に石川が座りこんでいた。
相田(あいだ)ぁ、なにやってたんだよ、おまえ。ちっとも出てこねーんだもん、ケツが床に張りついたぜぇ」
 えーっと。
 あたし、待っててって言ったっけ?
「おまえ、その絵の具箱なによ。みんなそのへんでテキトーしてさ、次からは試験勉強するんだよ。オレたちもそうしようぜ」
 はぁぁ?
「ジョーダン。あたしはもう決めてんの、描くところ」
「うそ。まさかおまえ、まじで外に行くつもりかよ」
「うそなんかついて、どうするのよ」
 絵の具箱をガチャガチャいわせながらスニーカーに足を突っこんで。
「ばいばーい」
「相田!」
 半腰になった石川は置き去り。
 最初からトップスピードで階段を走り下りる。
 腰でガチャガチャ揺れる絵の具箱が不安だから、次回からは筆を縛ったりナップサックで背負ったり、工夫しないとね。
 考えるだけで楽しくて、びゅんびゅん走れる。
 ありがとうクマ。
 バレー部でしごかれてるもんね。
「あたし、走れるよぉ」


< 78 / 173 >

この作品をシェア

pagetop