片思いー終わる日はじめる日ー
 あたしが伸ばした腕は、ぎりぎり大海ちゃんの指に届いた。
 大海ちゃんが振り返る。
(ばく)を、ひとりにしないで」
 あたしの指はもう、麦に届かない。
 あたしはもう友だちにもどれない。
有実(ゆみ)……、だって……」
「麦は中井が好きなの」
 大海ちゃんが、息をのんであたしを見つめる。
 あたしはつかんでいた彼女の指をそっと放した。
「有実……」

 身体がふわりと浮いた気がした。
 こんなに、こんなに、そのことがあたしのなかで重くふくらんでいたなんて。
 だれかに言えて。
 言ってしまって。
 あたしはやっと失恋できたのかもしれないね。


< 88 / 173 >

この作品をシェア

pagetop