片思いー終わる日はじめる日ー

「はい。これがきみたちのクラス」
 そう言って中井・マイペース・リラは、黒板をポケットから取り出した筆のお尻でコツコツたたいた。
 黒板には8本の折れ線グラフ。
 先生、意味がわかりません。
 わからないからどうしても意識はみんなうしろに持っていかれちゃうんですけども。
 それってあたしが悪い?

 さっきからかすかに聞こえているのは絶対、ページをめくる音なの。
 本人も花みたいにきれいな中井が教壇に立っているのに、うしろの男子はなにをしているの? まさか読書?
「センセー」石川だ。
「495、370って単位なに? まさか点数?」
 え?
「おお。…えと3番、石川 啓介くん。するどい」
 出席簿をチラ見した中井の筆が黒板を左から右にダンスする。
「D組最高495点。最低370点」
 その瞬間、静かだった教室がブーイングの嵐。
「うそぉ!」
 思わず出ちゃった声に口を押さえたけど。
 中学3年間、バレー部できたえたあたしの声の大きさはハンパじゃないんだよぅ。
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