片思いー終わる日はじめる日ー

 * * *

「大海ちゃん、本当に無理しなくていいんだよ」
 いよいよ明日は選手権地区予選の2回戦。
 昨日は部員全員が教頭先生に呼ばれた。
 女子の2回戦進出なんて創立以来初めてです。かんばってくださいねって。
 赴任以来、黙々と監督を引き受けてきたらしいクマは、あたしたちよりも感極まっていた。
 会場は隣町の商業高校。
 そのころうちの高校の武道館では柔道と剣道の新人戦。
 SHRで河島が『皆さん、応援お願いしますよ』と言ったのはもちろんそちら。
 女子のスポーツ大会なんて、河島のスケジュールには書かれてもいないんだろうね。
 別にいいけどさ。

「ごめんね、有実(ゆみ)、心配かけて。でも大丈夫よ。あそこの駅には降りたことないけど、地図があるからなんとか……」
「おっ、意外に大胆だな、大海。ひとりで行くのか」
 1班は今週はトイレ掃除。
「キャーッ、石川くん、えっち!」
「ばっっっ、だれがエッチだ、だれが。オレはのぞいてねえぞ!」
 はいはい。確かにね。
 女子トイレの入口からのぞいているのは、石川の左手だけだ。
 トイレ掃除当番のときは、2対4。
 班にひとりしか女子がいないところは、ひと声かければ手の空いた子たちが手伝うから、ふたりが1番(そん)なかんじ。
 やっぱり、本格的な席替えを提案しようかな。
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