片思いー終わる日はじめる日ー
「なにぶつぶつ言ってんだよ。ペーパーくれ、ペーパー!」
「自分でもらってきなさいよ」
「やだよ、みっともない。トイレットペーパーなんか抱えて廊下を歩けるかよ」
「わたしたちは歩いてきましたけど」
 お。大海ちゃん、強い。
「また、うっちゃまんか伊勢くんに押しつければいいじゃないの。得意でしょ」
「ちぇっ。おまえには頼まねえよ。頼むよ、大海。オレ、ジャンケンに負けちったんだ」
 大海ちゃんが、あたしの顔を見る。
 へーヘー。いいよ、好きにして。
「んもう、しようがないなぁ、石川くんは。じゃあ、ふたつあげる。でも、足りなくなったら、今度はちゃんと取りに行くのよ」
 大海ちゃんは、持っていたトイレットペーパーを、そのまま渡しに出ていった。
「サンキュー、大海。大海は相田(あいだ)と違ってやさしいなぁ」
 おいおい、聞こえてんだよ。
「相田ぁ」
 なんだよ。
「明日、オレも見に行ってやるわ」
 え?


「……本当はきっと、最後のセリフを言いにきたのよ、石川くん」
 もどってきた大海ちゃんは、鏡の中からあたしにVサイン。
「な一に言ってんだか」
 大海ちゃんもとっぴょうしもないことを思いつくようになったねぇ。
 とにかく。
 明日は。
 がんばる、ぞ――!


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