片思いー終わる日はじめる日ー

 * * *

「根性だ! お前たちが、だれにも負けないものは根性だ! ねばりだ! 拾って、拾って、拾いまくれ!」
「ハイッ!」
 あたしたちは、相手チームの高い壁に苦しめられながら、どうにかフルセットの戦いにもつれこんでいる。
「相手はお前たちと同じ高校生なんだぞ。ちっとくらいデカイからってビビるな!」
「ハイッ!」
「安心しろ、今は不利かもしれんが、お前たちのほうが10倍結婚相手には恵まれる」
「はあぁ?」
 3年生のいない進学校の地区予選は2回戦突破がもう崖っぷち。
 人数がいないから、あたしなんかでもレギュラーに抜擢(ばってき)されて。
 背の低いあたしにもできることをクマは真剣に教えてくれる。
 でも今はまだそれをコートで実践できる感激なんてちっともない。
 ただただ恐ろしいだけの公式試合。
「よし! まずはサーブブレイクだ。本当に大丈夫なんだな、相田(あいだ)
「はい!」
「よし。もし傷が残ったら、オレが嫁にもらってやる。心置きなくあばれてこい!」
 あっはっは。
 なんだかなぁ。
 でも緊張は解けた。
 ありがとね、センセ。

< 93 / 173 >

この作品をシェア

pagetop