片思いー終わる日はじめる日ー
 拭いても、拭いても、汗が吹き出す。
 2面コートのりっぱな体育館は熱気が満ちて、長袖ユニフォームのあたしたち選手は、みんな汗だくだ。
 タイム中に、ここがホームコートの商高のバレー部員たちが、コート清掃に入ってくれるけど、飛び散る汗でシューズがすべる。
相田(あいだ)、かわいそうだけど、うちに代わりはいないんだ。頼む」
「わかってます。大丈夫。棄権(きけん)なんか死んだっていやですからっ」

 ドジなあたしは、2セット目にボールを追いかけていて汗ですべり、コート脇の長椅子に頭から突っこんだ。
 クマが大げさに巻いてくれた包帯にも、もう血がにじんでいるらしい。
 相手チームは座る場所がなくて、あたしたちのコートの脇まで控えの選手でいっぱいのマンモスチーム。
「やだねぇ、弱小チームは……」
 その控えの選手のだれかがこれみよがしに言った。
「なんだってぇ?」
 とたんにみんなに囲まれた。
 はい、ごめんなさい。
 みんな、いっせいに審判にスマイル。
「相田! おさえて、おさえて」
 あたしたちは、たったの8人で。
 ケガをしたまぬけの代わりもいないチームだけど。
「あんたたちよりマシよっ」
 主審に背をむけて、思いっきりガッテム!
 今、ここでまだ戦っている、この試合からなにかを学ぼうともせずに、次の試合相手の偵察に余念がないあんたたちよりね。

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