片思いー終わる日はじめる日ー
 クマがあたしたちを見回す。
 あたしたちは、うなずいた。
 これが最後のタイムアウト。
 レフトフォワードに長身の和田先輩が戻ってくる。
 みんな小さいうちのチームは、和田先輩だけが頼りなのに、マークされて、跳ばされて、今どうして立っていられるのか、わからないくらい体力を消耗させられていた。
「さっ、声だしていこーよ、ファイッ!」
「ファイッ!」
 シューズが鳴る。
 汗が飛ぶ。
 上がるボールを追いかけて。
 カウントは22-18。
 目にしみた汗をぬぐうと袖が真っ赤になった。
 クマが立ち上がる。
 大丈夫、センセ、大丈夫だよ。
 本当は、ひっくり返りそう。
 でも……。
「みんな、カバー頼む! なんとかゲームセットまでがんばろう。相田(あいだ)は立ってればいいからねっ。ファイッ!」
「ファイッ!」
 キャプテンに、そんなことまで言わせちゃって。
 ちくしょ!
「へい! 拾っていくよ」
 みんなの夏休み、むだにはしないよ。
「相田!」「相田!」
「よし、相田、その意気だ」
 へへ。
 相田 有実(ゆみ)さんの根性、なめんなよ!
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