笑顔のそばに
「…少し、歩こうか。」
麗華の酔い覚ましついでに家に送る。
静かに車から降りた麗華の足元はフラフラしてて覚束無い。
麗華の家の近くをぐるっと散歩する。
「…ここ、飼ってる犬の散歩コースなの。」
「わんこいるんだ?」
「可愛いよ。」
酔ってるから。
いつもハキハキ話す麗華が舌足らずになってる。
…可愛い…
そして酔っているからいつもより陽気になってる。
「どうですかあ〜、傷心者同士付き合っちゃいますか〜??」
…これ、酔ってるから、だよな?
酔ってなかったらこんなこと、絶対言わない。
「いいと思いますよ〜?」
だから敢えて、曖昧な答えを言う。
「…まあ、それはないか。」
麗華が静かに下を向く。
…今日の麗華は下を向いてばかりだ。
「…あぶないよ。」
酔ってる酔ってない関係なく女の子が車道側歩くとか考えられない。
「…あ、ありがと…」
「それと危ないから俺の横にいて。」
危なくなんてない。
近くにいて欲しいだけだ。
麗華の腕を掴み、自分の横に寄せる。
…ほそっ…
力入れたら折れるんじゃないか?
「ごめん、結局付き合わせちゃったね…」
「気にしなくていいよ。
酔っている麗華見るのなかなか貴重だろ。」
「…まあ基本ここまで飲まないからねえ…」
苦笑する麗華。
…そんな笑顔が見たいんじゃない。
いつしか俺は麗華の笑顔に安堵を覚えるようになっていた。
「…ほら、早く家入りな。」
「うん…ありがとう。本当に。」
麗華の背中を押して家に入るまで見届ける。
入る直前に振り向いてニコッと笑う麗華。
…いや、可愛すぎだから…
「私が惚れたら将斗くんのせいだからねっ!」
「…っ!」
惚れてくれる可能性があるなら…
こんなに嬉しいことは無い。
「いつでも頼ってこいっ!じゃあな!」
麗華の無邪気な笑顔。
可愛すぎて思い出すと照れそうだ。
あのコンビニまで5分弱。
車に向かいながら麗華を思い返す。
車に乗り込んで運転していると麗華からLINEが。
『今日は本当にありがとう!』
『それで、さっきの、割と真面目にどうですか?』
…えっ…
さっきのことって言うと…
『傷心者同士付き合っちゃいますか〜?』
…って言うこと…だよな?
『いいと思いますがー?』
麗華からの返事は早かった。
『えっ、付き合っちゃいますか?ってことだけど…?』
「…惚れて、くれるかな…」
『麗華がいいなら。』
『将斗くんが、いいです。』
…え、可愛すぎない?
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