笑顔のそばに
椅子に座って携帯を眺めていた顔がこちらに向いて軽く会釈する妹さん。
「彼氏さんなんですか?」
静かな声で俺に尋ねる。
麗華とは少し違う話し方。
…似てるようで似てない。
「そうです。」
「…姉のこと、幸せにしてくれますか?」
「はい。」
「…お話したいので後で私の部屋に来てくれます?」
妹さんは冷めた眼差しで見つめる。
俺はコクリと頷く。
「流華、運んで。」
「わかった」
返事をしたのを確認すると妹さんは携帯を置いてキッチンに向かう。
次々に料理がテーブルに運ばれてくる。
俺も手伝おうと席を立つが麗華のお母さんがいち早く気づいてニコッと笑う。
「将斗くんはお客さんだから気にしなくていいわよ。
うちの子2人が手伝ってくれるから。」
「なんか、すみません…」
「気にしなくていいよ。」
運んできた麗華がふわりと笑う。
「そうよ、うちだと思って寛いでていいわよ。
今日はうちの人が帰ってこないから。」
お父さんかな?
「なんで帰ってこないの?」
麗華が歩きながら怪訝そうな顔をする。
「確か飲み会って言ってたけど。
そのまま飲みまくって明日出勤するんじゃない?
会社で飲むって言ってたし。」
「…迷惑かからないならいいけど。」
麗華は呆れたようにため息を吐いて席に着く。
妹さんとお母さんも座ってニコニコしてる。
「どうぞ、召し上がれ?」
「あ、いただきます!!」
メニューは味噌汁、ポテトサラダ、唐揚げ。
一般的な家庭料理だ。
「美味しいです!」
唐揚げ…
サクサクしてて美味しい。
「そう?良かった。
でも下拵えしてたのは麗華だから作ったのはほぼ麗華よ。」
「えっ、そうなんですか?」
「そうよ?私は唐揚げ揚げただけだもの。」
ニコニコ笑って麗華を見つめるお母さん。
「ポテトサラダも朝用意してくれてて味噌汁まで作ってくれてるからねえ〜」
…なんでも出来るんだな…
「じゃあ作った後に出勤してるんですか?」
「そうだよ。だいたい朝起きてご飯作って、用意してたら行く時間。」
隣から麗華の声。
唐揚げを頬張りながらもぐもぐ口を動かしている。
…朝そこまで準備してるんだ…
「将斗くん今日、どうやってきたの?」
「それは私も思った。」
今日?
あ、そうか、車じゃないからか。
「車ですよ。
近くのコンビニに停めさせてもらってます。」
「あー、あそこか。」
麗華が納得したように首を縦に振る。
「将斗くんが良ければうちに泊まっていかない?」
麗華のお母さんがニコニコ微笑んで俺を見る。
バッと麗華を見ると横目で俺の方を見ていた。
まるで“どうする?”と聞いているかのようだ。
「え、いいんですか?」
「うちは構わないよー?」
妹さんもコクコクと首を振って微笑んでいる。
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