笑顔のそばに
常に点滴をつけられ、時には呼吸器をつけられ…
「…これは…?」
「それですか?
漢字検定に受かった時のです。」
私服で映っていた初めての写真。
9歳くらいだろうか。
合格書をもってニカッと笑っている写真だった。
イタズラ好きの子供みたいで可愛い。
この写真の次くらいから私服で写っている写真が増えてきた。
「心臓病を少し克服して、多少体力が着いてきたのが今のお姉ちゃんです。」
今、麗華は21歳。
そしてこの写真に写っているのは生まれてから。
生まれてきてずっと病気と闘っている麗華。
人に優しくすることも、親身になってくれるところも。
全部麗華自身がしてくれていたことをそのまましてくれているんだ。
入院中の麗華の体は本当に細くて。
病院服を着ている麗華の首元や手首。
骨と皮状態だ。
「…私は、風邪とかでしかなったことないから分からないけど。
お姉ちゃん達はすごく辛い思いをしてきているから…」
「うん、流華さんの分も麗華のことは幸せにするよ。」
アルバムを見せてもらってさらに増した強い思い。
麗華のことは俺が絶対幸せにする。
心から強くそう思った。
ずっと支えて、隣で笑ってくれるように。
この時の笑顔を、取り戻してくれるように。
「将斗さんなら、きっとお姉ちゃんも心を開いてくれるはずです。」
「うん、まだ完全には開いてくれてなさそうだから…」
そりゃ多分人間不信にでもなっていることだろう。
時折冷めたような、不審感を持っているような、そんな目をする時があるから。
「改めて、お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします。」
流華さんが俺に深々と頭を下げる。
「当たり前だ、俺が絶対そばにいる。」
そばで守り続けて…
あの笑顔をずっと向けてくれるように。
【堀江将斗side END】

【松原麗華side】
のんびりまったり。
将斗くんが流華の部屋に行ってしまったから私は部屋でお酒を飲みながら本を読んでいた。
かれこれお酒の缶を3本開けてしまった。
「れーいかっ」
部屋の外から将斗くんの声。
「将斗くん?」
「そうだよー、入っていい?」
「うん。」
文庫本から目を離して私は扉を見る。
普通に入ってきていいのに。
「ただいま。」
「おかえり。」
私のそばにちょん、と座った将斗くん。
流華に何か言われたのかニコニコ笑ってる。
いや、ニコニコしてるのはいつもの事なんだけど。
ずっと笑顔っていうのも…なんか…
怖い。
何考えるのか分からなすぎて怖い。
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