笑顔のそばに
USBメモリを封筒に入れてデータ内容を記しとりあえず秘書課に向かう。
夕紀がいれば早いんだけどなあ…
秘書課の扉をノックしてそろりと扉を開ける。
「…総務課松原、入ります。」
秘書課も総務課と同じような雰囲気の部署だ。
和気あいあいとした感じ。
違うのは課長の愛想の違い。
夕紀は本当にニコニコして親しみやすい雰囲気だから。
「あ、れい…松原さん、もしかして書類の?」
「そうです、お目通りお願いします。」
「分かりました、ぜひかけてお待ちください。」
…夕紀絶対今麗華って言おうとしてた。
会社とプライベート混じったな、今。
「課長〜、お二人の関係知ってますからかしこまらなくていいんじゃないですかあ〜?」
「そうですよ〜、幼なじみなんでしょー?」
「一応ここ会社だからっ!ほら!仕事しなさい!」
…いじられてる…
「…はい、確認終了です、こちらは秘書課が責任もって管理させていただきます。
万が一のことがありますのでこちらのデータはそのままでお願いします。」
「分かりました、まだ容量はあるので万一のことがあれば総務課松原までお願いします。」
「え、松原さんもう帰っちゃうんですか?」
「…?ええ、はい。」
「木平課長から松原さんのこと聞いてたんでぜひ仲良くなりたいなあって思ってたんですけど〜っ」
「…またすぐに顔出しに来ると思うんで、その時に是非。」
夕紀からUSBを受け取って秘書課の扉を開ける。
「それじゃ、失礼しました。」
パタン、と扉を閉めて元の部署に戻る。
先にタイムカードだけ切るか。
残業になってしまう。
うーん、荷物は取りに行きたいなあ…
戻るか。
総務課の扉を開けて中に入るとみんなが笑顔で迎え入れてくれる。
「おかえりなさい、課長」
「ただいま、って言いたいところだけど私もう帰るよ。」
上着とカバン、私物を手に取って私はタイムカードを切る。
「あ、そうそう、一応私が居なくても大丈夫なようにマニュアル作ったから、わからなくなったら見てね。じゃ。」
上着を羽織って私は総務課を出る。
…だいぶ遅くなっちゃったな…
上着の中から携帯を取り出す。
今から電話かけたら出るかなあ…
まあ、先にLINEだけしとくか…
『遅くなってごめん、今から会社出るから30分くらいまだかかる。』
車まで小走りで向かい荷物を無造作に後部座席に放り投げる。
本当は家に帰って着替えたいけど待たせてる時間が長くなるから諦めた。
…正直スーツは運転しづらいし、堅苦しいから好きじゃないけどまあいいか。
エンジンをかけて眼鏡をかけ、少し急いでいつもの駅に向かう。
< 39 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop