笑顔のそばに
…ここからなら…頑張れば15分だな…
携帯で時間を確認して目安を立てて駅に向かう。
『今から行くよ』
送っておけばなんとなく時間は分かるだろう。
さあ、何分で行けるかな。
【松原麗華side END】

【堀江将斗side】
…そろそろかな…
早く会いたくて、どうしても会いたくて。
麗華に無理させちゃってるかもしれない。
仕事だって言ってたし…
完璧無理させちゃってるよなあ…
「…あっ…」
あと黒い車は…っ
遠目で何となくわかる麗華の車。
黒の車。
「おまたせ。」
「無理言ってごめん。」
「別にいいよ。」
かなり急いできてくれたのか麗華は仕事着であるスーツのまま。
いつも私服に着替えに帰ってるって言ってたのに…
「とりあえずどこか行く?」
「お腹減ったからご飯でもどう?」
時刻は午後5時。
何となく小腹がすいてくる時間だ。
「…おっけ。」
麗華の返答の声が少し小さく、ハンドルを握る手が少し震えている。
「…どしたの?」
「?…なんでもない。」
顔に出ないって本当なんだなあ…
いつも食べに行くファミレスに来た。
麗華と初めて会った時と同じところ。
慣れた感じで車をバック駐車させ、エンジンを切る。
サイドだけ見て駐車できるのすごい。
車から降りて中に入る。
「…ごめん、トイレ行ってくる」
「カバン持っていこうか?」
「…いや、いい」
麗華はカバンを抱えてトイレに向かう。
俺も麗華もスーツ。
はたから見たら仕事終わりにしか見えない。
けど実際は俺が成人式終わり、麗華が仕事終わり。
麗華のスーツ姿…
しっかり髪を束ねてパンツスタイルのスーツを着こなしている。
パンプルを履いていて、いかにも出来るキャリアウーマンって感じだ。
「…ごめん、おまたせ。」
戻ってきた麗華の顔は少し青ざめていた。
メイクの加減、と言われたらそれまでなんだけど。
「…麗華」
「何?」
「…発作?」
「…なんの事?」
意地でも隠そうとする麗華。
もう少し頼って欲しいのに。
俺、そんなに頼りないのかな…
「隠さないで、本当のこと言って。」
「…大丈夫だから…気にしないで…」
青ざめてくる麗華に不安しかない。
本来なら運転するのも辛いくらいだろう。
「…今日、私コーヒーで…」
「うん、わかった。俺はいつも通り食べるよ。」
とりあえずお腹は空いてるから…
いつも通りのハンバーグ食べよう。
「…けほっ…」
ちらっと麗華を見ると携帯と多分薬を握りしめて震えている。
…麗華の発作状態見るの初めてかもしれない…
「…ごめ、もう1回トイレ…」
フラフラになりながら立ち上がる麗華。
…もしかしてこれ、やばい状態だったり…?
もしかしなくてもやばいよな…
今日は早く帰さないと…
とは言っても車出してもらってるし…
「…俺の家、狭いしなあ…」
うちに泊まってもらうっていうのも有りだけど麗華が帰りたいと思ってるよな…
好きな人だから、無理して欲しくない。
好きな人だから、守りたい。
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