翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「少々お待ちください。確認しますので……」

警官はそう言い、無線で確認を取り始める。圭介が「大丈夫なんですか?」と心配げに訊ねてくるが、蘭は表情を変えることなく「心配する必要はありません」と答えた。ジョンと確かに約束をしたのだ。オドオドする必要はない。

時間がゆっくりと流れているような感覚がした。圭介が緊張した状態、蘭は無表情、警官は厳しい視線、そんな中で場違いなほど明るく「お〜い!蘭!」と声がする。門の奥から白衣を着た白髪混じりの男性が走ってきた。

「マクフライ先生、お久しぶりです」

蘭はペコリと頭を下げ、圭介も隣で同じように頭を下げる。そんな二人に対してジョンは優しい笑みを浮かべていた。そしてジョンは警官に門を通すように言ってくれた。

「久しぶりだね。一緒に働いていた頃より綺麗になって……。隣にいるのが君のナイト?」

ジョンの言葉に圭介は顔を真っ赤にしながら、「ち、違います!」と否定する。しかしジョンはニヤニヤとしていた。

「マクフライ先生、大切なお話があってこちらに伺いました」

真っ赤になった圭介をからかうように見ているジョンに対し、蘭は真剣な表情で見つめる。ジョンは「わかっているよ」と優しい目を向け、ついておいでと言い蘭と圭介を建物の中へと案内した。
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