翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
監察医たちが忙しく働く廊下を通り、蘭と圭介は応接室に通される。ソファに腰掛けるように勧められ、圭介はゆっくりと、蘭は美しい動作で座る。

「コーヒーでいいかな?」

ジョンが訊ね、圭介は「お構いなく」と答えた。ジョンは三人分のコーヒーをすぐに用意して蘭と圭介の前に置き、ジョンも向かい側に腰掛ける。

「話って?」

ジョンの問いに蘭は「アーサー・スチュアートを覚えていますか?」と質問で返す。ジョンは「覚えてるよ。君と一緒に日本の法医学研究所に行ってもらったからね」と答えた。

「そのアーサーについての話です」

蘭は真剣な顔で、アーサーが銃撃事件の犯人であることなどを話す。穏やかな目をしていたジョンの顔は、アーサーが裏切り者だったことを知ったショックで手で顔を覆う。

「あのアーサーが?僕は彼を信用していたのに……」

混乱するジョンに対し、圭介が「アーサーはアメリカにいると言っていたんです。彼の居場所について心当たりはありませんか?」と訊ねる。しかし、ジョンは首を横に振った。
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