翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「いや、知らないな。アーサーとは日本に行ったっきり連絡をほとんど取っていない状態だったから……」

「そうですか……」

蘭と圭介は互いに顔を見合わせる。蘭は、今すぐにでも駆け出して星夜を探したい気持ちを堪える。ギュッと拳を握り締めていると、圭介にその手を優しく握られた。

「神楽さん、そんなに握り締めたら手が傷付いてしまいます」

「深森さん……」

そんな二人をジョンは優しい目で見つめた後、蘭に提案をした。

「蘭がしたければでいいんだが、こっちの仕事を手伝ってくれると嬉しい。実はもうすぐ日本人の女の子のご遺体が運ばれてくるんだ」

一日に何百人もの人が世界のどこかで亡くなっている。その死因は様々であるが、その声を聞けるのはほんの数百人しかいない。

「ぜひ、仕事をさせてください」

蘭は死者の声が聞ける人間なのだ。それは世界のどの国にいても変わらない。死因を見つけることができるのだ。立ち止まってはいられない。

蘭の表情を見て、圭介とジョンは優しく微笑んだ。
< 14 / 36 >

この作品をシェア

pagetop