翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか

「いつもの君らしくないぞ」

世界法医学研究所に研修に来ている探偵の深森圭介（ふかもりけいすけ）、ドイツ人監察医のゼルダ・ゾルヴィッグ、そしてスウェーデン監察医のマルティン・スカルスガルドが研究所に戻ってきて蘭に声をかけるが、蘭は「アメリカに行かせてください」と繰り返すだけだった。

「まず、何があったのか教えてちょうだい」

碧子はそう言い、蘭をソファに座らせる。圭介が「コーヒーを持ってきますね！」と研究所を出て行き、また「アメリカに行かせてください」と言おうとしていた蘭の手をゼルダが包む。

「どうしてアメリカに行かなくてはならないのか、碧子先生は知らないわ。話してあげて」

ゼルダに見つめられ、蘭はそっとエメラルドのブローチに触れる。星夜がくれた大切な宝物だ。光り輝くブローチにしばらく触れていると、嵐が止んで海が凪いでいくかのように、蘭の心も落ち着いていった。その時、圭介が人数分のコーヒーを持ってくる。