翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「では、よろしくお願いします」

蘭と圭介は法医学研究所を出て歩き出す。鳴子の家はここからそう遠くはない。

「ここって高級住宅街なんですか?家がどれも大きいですね。プールもついてますし、海外の家って感じがします」

大きな門の向こうに見える家を見ながら圭介が言う。圭介の言う通り、ここは高級住宅街だ。いい会社に勤めている人や弁護士などがこの辺りには多く住んでいる。

「鳴子さんは通訳の仕事をされているそうです。スペインに留学されていたこともあって、スペイン語の通訳をしているとお聞きしました」

蘭の言葉に圭介は「ふ〜ん。そうなんですね」と興味はないといった態度をあからさまに見せる。

数十分歩き、蘭と圭介は白い壁のそこそこ大きな家の前に立つ。ここが鳴子の家だ。花壇にはたくさんのラベンダーが植えられ、紫の美しい花を咲かせている。

「……本当に来たの?時間の無駄だって言ったのに」

蘭がドアをノックすると、玄関に出てきた鳴子は嫌そうな顔をする。その姿はスーツではなくラフな格好だ。
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