翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか

「これは……？」

ベッドのシーツを見つめていた蘭は、ふとシーツに黒いシミができていることに気付く。シミの正体が気になった蘭はシミを採取することにした。カメラで写真を撮った後、綿棒を取り出してシミの一部を採取する。

「本当に気持ち悪いでしょ？この部屋、あいつが生きていた頃は一日中うるさかったのよ！」

鳴子の言葉に蘭は「何故騒がしかったのですか？」と訊ねる。鳴子はうんざりといった様子で話し始めた。

「あいつ、ボカロとかいうのにハマってずっとこの部屋で流していたのよ！あの機械音、気持ち悪くてたまらないわ！感情がこもってないし、音楽でも何でもないじゃない！」

「ボカロ……とは何でしょうか？」

初めて聞く単語に蘭は首を傾げる。圭介が「知らないんですか！？」と驚くが、蘭にとって知っている歌は星夜が教えてくれた「let it be」だけだ。

「ボカロっていうのは、ボーカロイドの略です。音声合成技術、およびその応用商品の総称のことで、メロディーと歌詞を入力してキャラクターに歌を歌わせる音楽ソフトのことですよ」