翠玉の監察医 真実を知るか偽りに溺れるか
「私は……星夜さんに助けられました……」

蘭は星夜との思い出を振り返る。辛いこともたくさんあった。心ない言葉をかけられたこともある。それでも、暗い過去の中で星夜は蘭の光だった。

「親を失った私をアメリカに連れて行って、そこで監察医という夢を与えてくれました。他人である私を育ててくださった。彼は私の生きる希望なのです」

蘭は自身の手を見つめる。この手は多くの命をあの時に奪ってしまった。星夜とは違い汚れた手になってしまった。それでも、この手で助けに行きたいと蘭は強く思っている。

「私は、この手で多くの人の殺めてしまいました。もう綺麗な手には戻れません。星夜さんを悲しませることになるでしょう。ですが、私が星夜さんを助けたいのです!どんな危険があっても、必ず助けたいのです!」

蘭の言葉に、蘭の過去を知らないゼルダとマルティンは驚いていた。碧子と圭介はただ黙っている。

「蘭ちゃん」

蘭は碧子に優しく両手を包まれる。しかし、碧子の表情はどこか険しいものだった。
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